翻訳にあたっては、外国語で情報を吸収する能力が通常より低下する。日本語の考え方、論理、感情、発想、言葉の世界が影響を与えるからだ。日本語で表現する能力も通常より低下する。外国語の考え方、論理、感情、発想、言葉の世界が影響を与えるからだ。この能力の低下をどこまで抑えられるかが、翻訳では勝負の分かれ目になる。能力の低下を抑えるには、外国語と日本語という二つの世界をうまく共存させる方法を学ばなければならない。日本語の世界に生きる人格と、外国語の世界に生きる人格との間で、意識的な二重人格状態を作りださなければならない。そのためには、外国語を読む作業、日本語を書く作業に「意識的」にならなければならない。そしてとくに、考え方、論理、感情、発想、言葉のすべてにわたって、日本語と外国語に微妙な違いをつねに意識するようにしなければならない。翻訳は何重にもむずかしい。翻訳について考えるとき、この難しさを確認しておくことが重要である。